多数決の作品こそ、まず疑ってみる

 まず……今回の文章、自分は一ユーザー、一漫画アニメゲーム好きとして書いています。ので、自分の仕事を知っている人も知らない人も、そう思って読んでいただきたく。


 表題について。批判的な意味ではなく、良い意味で、毎日こういう事を考えています。それが、自分の『作品を見るスキル』になると思っているからです。
 人に話すには誤解されることも多く、まとめられないので書く機会はあまりないんですが、とても判りやすく書かれた言葉があったので、知らない方の日記を取り上げさせていただきました。

みんなと同じゲームをプレイし、みんなと同じ感想を持つゲーマーが勝ち組

 とにかく、この言葉だけのために取り上げてしまったので、内容について自分の考えを先に述べておきます。
 まず、id:ryouta765氏自身、もちろん本当は判っていることと思いますが……

だからゲーマーコミュニティーの間で大きな話題となっているこの3本の中のどれかを購入することこそが「正解」であり、それ以外は「間違い」なのである。

などと思う必要はまったくなく、それこそが『間違い』であります。本来ゲーム中の最大の楽しみは、その後のコミュニケーションにある訳がないのです(最近は、そういうところに特化したものもありますが、それは時代を見て作られたものと思います)
 作品の、その中に面白さがあるのであり、この話題の元になっている新納氏の言葉も元々はそれを前提にした上での発言だったはずです。しかし、

『ゲームっていうのはゲームそのものを楽しむより、ゲームの体験を人と話すのが楽しいんです。もう、「1人でゲームやって、クリアして、おもしろかった」という時代は終わったと思います』

との発言は、自分でゲーム作りを否定してしまっている気がしますが。
 とにかく。自分の選ぶゲームが話題にされないのなら、面白さを伝えるべくどんどん評価を発信するべきです。id:ryouta765氏には、自分の感性を信じ、面白さを感じるスキルを磨くことを止めないでいただきたいと思います。


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 さて、あらためまして……

みんなと同じゲームをプレイし、みんなと同じ感想を持つゲーマーが勝ち組

です。


 ネットの発達した今の時代、昔とは比べものにならないほど『他人の意見に影響されやすいユーザーが多い』のではないかと思います。というか、『他人がどんなアニメを見ているか、どんなゲームをプレイしているか』知っていないと、自分で作品を選ぶことが出来ない人が多くなっているのでは……とさえ。
 多くの人が『自分の好み』だと思っているものは、どこかの情報で無意識に植え付けられたものであるかもしれない。当人達は自分のものだとしか思っていないから、それを疑う事がない。いや、それを疑ってしまうと『本当の自分の好み』をあらためて探さなければならないので、無意識に恐れているか、面倒くさいので楽な方向にしているのか。
 知人の言葉を混ぜさせてもらいます。
「かつて、オタクというのはスキルであった」
 自分の感性で良い作品を見つけることを何よりも喜びとし、他人より先にそれを知っていることがステータスであるのが、オタクだったと思います。ちょっと名が売れた作品に対し「俺は昔から知っていた」と言いたくなるのは決して恥ずかしいことではなく、自分の感性を信じるからこその、ごく当たり前の言葉だった。
 しかし、
現在のオタクの大多数は『スキルではなくコミュニケーションのツールとして商品を買っている』ように感じます
 「話題になっている、多くのユーザーが良いと言っている作品だから間違いないはず」「微妙だと感じたら、自分の感性がついて行ってないのかも」 自然と『数の売れた作品』のマイナス意見が少なくなってしまう。情報を頼りにする人はそれを見て、さらに作品を買い……。
 『サイレントマジョリティを考慮して』というのは笑い話になっていますが、人が気付いていないところでこそ、いくらでも不条理な状況は作られていると思います。


 どんな情報を見ても「誰でもない自分の思考で判断できているか」ということを一度疑う事ができなければ、自分の好みを確立していく事などできません。もちろん、疑いすぎると逆の方向で自分でないものになってしまうのですが、そのバランスを見極められる人こそが、真に作品を評価できる資格のある人間だと自分は思います。


 また、受け手側がそんな状況になっていれば、作り手側には「一定ラインの本数まで届くための話題作りさえできれば」という考えが出来上がります。知らず知らずのうちに業界のクオリティも下がっているかもしれません。いや、実際に、話題性を最重要だと考えている制作者は大勢います。『面白さ』よりも『売れる事』を最重要に考えるのは「営業的に当然だ」と、そういう人達は言うでしょう。が、面白いものを作ることがやはり最重要で、面白いものが支持されることが当たり前の業界でなければいけないと思います。
 たくさんのユーザーがいる作品を取り上げ、「売れるからには、何かあるのだろう」という意識は、すでに使えないものだと思います。正確には『何か』はあっても、営業的な良さである場合が多いので、面白さを求める立場なら言ってはいけない言葉かと。
 今の時代が『話題性という判りやすさがなければ、判断できないユーザーが多い』のだとしたら、それを憂えることなく利用してしまうなど、作品を作る側としてあってはならないと思います。


 最後に、少し自分の感情が入った話ですが。
 自分の部屋には、売れている作品のパッケージがあまりありません。支持したタイトルが売れていないことが多いです。しかし、それを指して「マイナー主義」と変人扱いされることが、自分は心底嫌です。『人数が多い側が本当は間違っているかもしれない』という可能性を考えないのは、多数決にすがらなければ安心できないということではないかと思ってしまいます。
 多数決の話など関係無く、すべての作品をまず候補として並べようとして、「たまたま売れている作品に興味が湧かなかった」だけかもしれない訳ですし。実際、売れている作品でも興味の湧くものがあれば購入しているのですし。
 その『まず、すべての作品を並べようとする』ことをしないユーザーがいる事実が、自分はとても悲しく思います。『話題に挙がる作品の中からしか選べない』ということは、本当に楽しい作品に出会えないまま人生を過ごしてしまうかもしれないことなのですから。


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 うーん……やっぱりまとまっていませんが、自分は一人の漫画アニメゲーム好きとして、こういうことを考えています。他の、アニメ漫画ゲーム好きとしては同じであるはずのお祭り好きな人達にも、一度、話題性をさておき「自分が求める面白さとは、どのようなものなのか」考えてみて欲しいと思います。
 そろそろ真剣に、業界のレベルアップを考えていかなければならないのではないでしょうか。そのためには、作り手よりもまず、受け手がレベルアップしなければ変わりません。なぜなら、今、作り手の大半は、受け手を見ながら作品を作っているのですから。